生環境構築史

編集後記EDITORIAL POSTSCRIPT

中谷礼仁+日埜直彦+藤原辰史【編集同人】

Norihito Nakatani+Naohiko Hino+Tatsushi Fujihara【HBH Editors】

構築様式4への発想は、おそらくこの300年ぐらい、構築様式3の影で張り付いて、じっとその活躍の契機をうかがってきたのではないだろうか。第一特集では、そのあり方を、人類の未知、そして未来について多くの思索や実験を行ってきたサイエンス・フィクションの蓄積の中からこそ探し出すことにしたのだった。第一号は果たしてこの役目を果たすことができただろうか。ぜひ、どんな小さなことでも良いので感想を送っていただきたい。このWebzineは、これからはじまるのだ。同人はじめ多くの関係者、そして本活動に興味と賛同を示してくれた助成団体、研究機関に感謝したい。更なる活動のために、新しい協力者との出会いがあることを期待している。
(本特集担当・中谷礼仁)

サイエンス・フィクションは近代の黎明期に、その科学が開いた新しい視界に向けて書かれはじめた。宇宙、海底、そして未来や過去を旅する可能性を科学のヴィジョンがかいま見せ、そこに勇躍する想像力が花開いた。それは胸躍る未知への挑戦であったが、よく見ればそこにその時代の陰りが少しずつ刻まれていたことに気付く。構築3とわれわれが呼んでいるものの、明るい面と暗い面がそこに早くも捉えられていた。そうして、現代科学もまた新しい視界を切り拓き、それに肉薄するようにサイエンス・フィクションも想像力を研ぎすませている。だがそこで、楽天的な明るさよりは、不吉な予感がしだいに色濃くなってきているのではないか。サイエンス・フィクションのその心象風景を、生環境構築史は共有している。だからこそ構築4の素描を試みるとき、われわれはサイエンス・フィクションが経てきた変容をたどり直すことになった。世界の違った捉え方を求めるそのあくなき挑戦と、構築4は共振する。
(本特集担当・日埜直彦)

サイエンス・フィクションは私にとって第一に娯楽である。現実を相対化できる爽快感が心地よい。第二に歴史叙述の修行である。知らない世界をどう表現すればいいのか、ヒントが盛りだくさんだ。だが、私はこの特集の編集過程で第三の味わい方を学んだ。共有である。サイエンス・フィクションに描かれた世界について語り、言葉を共有することに高揚感を抱いた。宇宙の農夫、アヴァンガーデニング、希望としての作者の存在……。いろんな未知の言葉をいろんな人と分かち合いたい。
(本特集担当・藤原辰史)



[2020.11.1 UPDATE]
生環境構築史とSF史:基調講演
Habitat Building History and History of Sci-fi: Keynote Speech
/生環境構築史与科幻小说:主旨演讲
巽孝之/Takayuki Tatsumi
生環境構築史とSF史:座談
Habitat Building History and History of Sci-fi: Discussion
/生环境构筑史与科幻作品史・座谈
巽孝之+生環境構築史編集同人/Takayuki Tatsumi + HBH Editors
地球の住まい方──ジュール・ヴェルヌ〈驚異の旅〉における「ロビンソンもの」の展開
Verne’s Never-ending Voyages
/地球的居住方法——儒勒・凡尔纳《奇异旅行》系列中的“荒岛文学”情节
石橋正孝/Masataka Ishibashi
中国SF小説においての現実と非現実──「科幻現実主義」と劉慈欣の作品から語る
Reality and Non-Reality in Chinese Science Fiction
/中国科幻小说中的现实和非现实: 从科幻现实主义作品和刘慈欣作品出发
藤野あやみ/Ayami Fujino
退屈な都市と退屈なSF、過去に語られた未来から逃れるために
The future is going to be boring
/无聊的城市、无聊的科幻,为了逃离过去所描绘的未来
樋口恭介/Kyosuke Higuchi
エイリアンのアヴァンガーデニング
Alien Potatoes
/外星先锋园艺
永田希/Nozomi Nagata
がれきから未来を編む──災間に読むSF
A Science Fiction Survival Guide to Doom and Destruction
/从瓦砾中编织未来──在灾难的间隔之间阅读科幻小说
土方正志/Masashi Hijikata

協賛/SUPPORT サントリー文化財団(2020年度)、一般財団法人窓研究所 WINDOW RESEARCH INSTITUTE(2019〜2021年度)、公益財団法人ユニオン造形財団(2022年度〜)