生環境構築史

第6号  特集:
戦時下の生環境──クリティカルな生存の場所 Wartime Habitat: A Critical Place of Survival 战时生环境──临界性的生存场所

文献紹介[3]戦跡のデザインあるいはキュレーション

HBH同人【藤原辰史】

Bibliography [3] Design of Battlefield (Museum on Violence)HBH editor【Tatsushi Fujihara】

文獻介紹[3]關於戰爭遺蹟的設計或策展

[2023.6.10 UPDATE]

Historial de la Grande Guerre(第一次世界大戦博物館)HP



https://www.historial.fr/en/museum-layout-and-tour/visiting-the-museum/

フランスのペロンヌにある第一次世界大戦を多角的に捉えるための博物館。激戦地で知られるソンムの近くに位置する。この博物館に訪問して最初に感じるのは「バランス」である。仏独英露米など主要交戦国どちらかの歴史観に偏らずに、できるかぎり複数の視線を残そうとする意図を強く感じる。国境を越えた歴史家の共同研究の賜物だといえよう。図録も充実している。グロテスクな戦場を描いたオットー・ディックスの作品のコレクションも必見。今後、アジアやアフリカなどでの第一次世界大戦に関する展示が増えることを期待したい。
(藤原辰史)

Forensic Architecture



https://forensic-architecture.org

ロンドン大学ゴールドスミス校に拠点を置く学際的な研究並びに芸術活動のグループ。世界中の国家による暴力と人権侵害の現場を、写真分析、測量、シミュレーションを駆使して明らかにしていく。ホームページでほとんどすべての作品を見ることができる。たとえば、ロシアによるウクライナのテレビ塔へのミサイル攻撃を扱った作品では、周辺でのナチスのユダヤ人虐殺の記憶が掘り返される一方で、イスラエルによるガザ地区の農地の農薬による攻撃を扱った作品もある。さまざまな「攻撃」の「現場」を空間的かつ歴史的に捉えていく活動の好例。
(藤原辰史)






藤原辰史(ふじはら・たつし)
1976年生まれ。食と農の現代史。京都大学人文科学研究所准教授。著書=『ナチスのキッチン──「食べること」の環境史』(水声社、2012)、『トラクターの世界史──人類の歴史を変えた「鉄の馬」たち』(中央公論新社、2017)、『戦争と農業』(集英社インターナショナル、2017)、『給食の歴史』(岩波新書、2018)、『分解の哲学──腐敗と発酵をめぐる思考』(青土社、2019)など。編著=『第一次世界大戦を考える』(共和国、2016)など。共訳書=フランク・ユーケッター『ドイツ環境史 エコロジー時代への途上で』(昭和堂、2014)など。

生環境を捉える軍事史の系譜
The Bio-environment of the Battlefield from a Military Historical Perspective
/生環境視角下的軍事史譜系
唐澤靖彦/Yasuhiko Karasawa
戦時下生環境ガイド[1]島──閉ざされた領域で継続する戦争
Guide to the Wartime Environment [1] Island: Sustained Warfare in a Confined Territory
/戰时生環境導覽[1]島──在封闭地区持续的战争
青井哲人/Akihito Aoi
戦時下生環境ガイド[2]穴──沖縄戦とガマ
Guide to the Wartime Environment [2] Caves: The Battle of Okinawa and ‘Gama’(Karst)
/戰时生環境導覽[2]洞穴──沖繩島戰役和石灰岩洞穴
青井哲人/Akihito Aoi
戦時下生環境ガイド[3]崖──ガリポリの崖、クルクキリセの高地
Guide to the Wartime Environment [3] Cliffs of Gallipoli, Hills of Kirk-Kilise
/戰时生環境導覽[3]崖──加里波利的懸崖,克爾克拉雷利的高地
伊藤順二/Junju Ito
戦時下生環境ガイド[4]平原──塹壕と平地、第一次世界大戦を中心に
Guide to the Wartime Environment [4] Trenches and Plains: Focusing on World War I
/戰时生環境導覽[4]戰壕和平地──以第一次世界大戰為中心
藤原辰史/Tatsushi Fujuhara
戦時下生環境ガイド[5]工場──封鎖による生存条件の損害
Guide to the Wartime Environment [5] Factory: Damage to Survival Conditions Due to Blockade
/戰时生環境導覽[5]工廠──封鎖對生存條件的損害
藤原辰史/Tatsushi Fujuhara
論点[1]インタビュー:戦争と性
Issue [1] Interview: War and Gender
/論點[1]採訪──戰爭與性
奈倉有里/Yuri Nagura
論点[2]原爆の遺品が語るもの──石内都『Fromひろしま』からの思考
Issue [2] What A-Bomb Mementos Tell Us: Thoughts from Miyako Ishiuchi’s “From Hiroshima”
/論點[2]講述原子彈的遺物──由石內都的《From廣島》引發的思考
藤原辰史/Tatsushi Fujuhara
論点[3]工兵論
Issue [3] On Military Engineers
/論點[3]工兵論
唐澤靖彦/Yasuhiko Karasawa
文献紹介[1]生環境としての戦場
Bibliography [1] Books on Battlefield as Habitat
/文獻介紹[1]戰場中的生環境
HBH同人/HBH editors
文献紹介[2]軍事をめぐる写真集・図集
Bibliography [2] Photographic Collections and Illustrated Books
/文獻介紹[2]軍事寫真集・圖集
HBH同人/HBH editors
文献紹介[3]戦跡のデザインあるいはキュレーション
Bibliography [3] Design of Battlefield (Museum on Violence)
/文獻介紹[3]關於戰爭遺蹟的設計或策展
HBH同人/HBH editor

協賛/SUPPORT サントリー文化財団(2020年度)、一般財団法人窓研究所 WINDOW RESEARCH INSTITUTE(2019〜2021年度)、公益財団法人ユニオン造形財団(2022年度〜)